大久保間歩入り口から30〜50メートル付近には、白っぽいチリチリしたようなものが沢山落ちているのが目に付きます。これは、坑道の中に住んでいるキクガシラコウモリの餌になったプライヤキリバという蛾の翅(はね)で、コウモリがこの蛾を食べたあと、養分のない翅の部分だけを口から吐き出した残骸です。
キクガシラコウモリ
このプライヤキリバは非常に変わった生活史を持つ蛾で、春先になると洞窟から飛び出し、アラカシ、コナラ、クヌギなどに産卵。新芽が出ると卵が孵化し幼虫となり、周辺の新芽を食い尽くしながら成長し、夏には成虫となって再び洞窟の中に帰っていきます。
プライヤキリバという蛾
洞窟の中ではもっぱら「夏眠」をむさぼり、一部はそのまま「冬眠」し、成虫期の大部分を寝て暮らし、春になると洞窟の外に飛び出すという、何とも羨ましいような生活史を示します。
このプライヤキリバにとって洞窟の中がもっとも安全な場所だと考えたとすれば大間違い、その大部分はキクガシラコウモリの餌になってしまうのです。この季節になると、そろそろ新しく羽化したプライヤキリバが洞窟に入ってきます。
プライヤキリバには気の毒ですが、キクガシラコウモリは私たち人間にとって害虫を退治してくれる貴重な益獣なのです(O)。